読了: 人生後半の戦略書

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人生後半の戦略書 ハーバード大教授が教える人生とキャリアを再構築する方法

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誰しも歳をとり、体力だけでなく知能も衰える。そんなつい目を背けがちな現実を受け止め、中年期以降のキャリアを楽しいものにするためのヒントが書かれた本。歳を取ったらキャリアを諦めろといったネガティブな話ではなく、誰しも陥りやすい上昇志向ばかりのキャリアに疑問を感じた時、新しい道を切り開くためのヒントになる内容だと思った。

本書では加齢に伴う能力の低下を受け止め、流動性知能(思考の速さなど)から結晶性知能(知識・知恵)生かす働き方へシフトするべきだと説いている。

言い換えれば、こういうことです──若いときは地頭に恵まれ、歳を取ったら知恵に恵まれる。若いときは事実をたくさん生み出せるし、歳を取ったらその意味と使い方が分かるようになる。

また能力を生かしてより良い給料やポジション、広義に「成功」を追い続けることが非現実的で幸福ともかけ離れていると強調していて、文中ではこれを「ストライバー(成功者)の呪い」と表現している。

自分自身をストライバーとは思ってないが、転職も数回経験し新卒時代よりはるかに待遇も上がった。それでも今に満足かと言ったらそうでもなく、より上を目指したいと思ってしまう。結局のところ給料や地位といった世俗的な物差しで考えるといつまでもアガリはなく、その一方で能力の低下を考えるとそうした物差しで上を目指すことが困難になり、自分の首を絞めることになる。

それを踏まえて中高年期のキャリアをどうするのかは、やりがいを感じるポイントや戦い方をシフトする必要がありそうだ。

人生の後半は、知恵で他者に奉仕しましょう。

若年時代はバッサバッサと未開の地を切り開く前線に立ち、派手な注目や報酬を得る。中高年期はそれを実現するための道具だったり仕組みを作ったたりする、地味だが堅実で不可欠な役割を想像する。ソフトウェアエンジニアに例えれば前者はいわゆる新規開発で、後者は運用寄りな部分であったり育成、またはそれまでの経験を活かしたチームや制度の組成だったりがイメージしやすいかもしれない。これらの役割は元々横並びに共存する役割であり、年とともに軸足を置く得意領域が変わるだけ、といったイメージで個人的には受け入れやすい。

自分の実体験としてもキャリアを重ねるごとに得る昇給などから得られる幸福度は鈍化しているのが明らかだ。上に行くほど上昇レンジが狭まるのもあるが、キャリアアップの一喜一憂を繰り返すのに疲れた・飽きたのもあると思う。一方で「自分が役に立てている」と感じられた時は幸せが大きく、その感覚は歳を重ねても色褪せることがない。

とはいえ感謝されるキャリアなら何でもいいかと言うとそうではないし、難しい。ならば人生後半どこにリターンを求めていけばいいのだろうか...明確な答えは見出せてないが、本書にある以下の一節は心に止めておきたい。

正しい目標を掲げれば、つまり成功して他者に貢献することを目指せば、残りのキャリアは、キャリアそのものが報酬になるのです。

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