スタートアップで半年の育休を取った話
2021 年 2 月に第一子が誕生し、約半年間の育休を経て今日から仕事に復職しました。 男性の育休取得率が世間で問題になる中、自分が所属している 株式会社 10X はまだ社員数 30 人規模のスタートアップですが 安心して働ける環境をづくりを積極的に行っており、幸いにも長期間の育休をいただくことができました。
男性の育休体験談はそう多くなく、ネットに情報がいくらあっても無駄ではないと思うので今回の体験を長めのブログに書いてみます。
はじめに
夫婦ともに地方出身の都内住まいです。関東圏に親族はおらずコロナ収束も見えない状況のため、2 人だけで子育てをしないといけない事だけが分かっている状態でした。とはいえ妻が妊娠中の 2020 年は、ぼやっと育休を取らないと大変そうだな、と考えている程度でした。
育休期間について
おそらく誰もがぶつかる「何ヶ月が育休に適切か」という問題。自分自身も悩み、そして育児開始前はだいぶ見立てが甘かったなと思います。実際に経験した今言えることとしては、6 ヶ月を基本として考え、家庭の事情(実家が近くて支援が受けられるなど)を加味して増減させていくのが良いのかなと思いました。
これは実際に体験談を聞くのがベストで、取得前に周りの人にヒアリングして解像度を高めるのが良いでしょう。私は同僚の @tsutomuakagi さんに記事 育休のすすめ ~期間や時期に悩む方へ~| Tsutomu Akagi | note を教えてもらって参考にしたりしていました。
自分がなぜ今回の期間が丁度よく感じたか、参考までに半年間どう過ごしたかを書いてみます。
喜びと混沌の生後 1〜2 ヶ月
予定日よりかなり押して仕事中もそわそわしていましたが、無事 2 月上旬に子供が生まれました。
妻は帝王切開にて出産だったためしばらく外出ができず、育休に入ったあと買い出しや出生届などの手続き系を全て一人で行いました。これもまた育休をとってよかったポイントです。出産がどのような形になるかは最後までわかりません。
子供のお世話は初日からカオスを想像していましたが、実際は拍子抜けするほど気楽なスタートとなりました。初めての作業に戸惑うことはあったものの、うちの子は親が心配になるほど大人しく、夜もぐっすり寝てくれたためです。沐浴中も心地良さそうに過ごしてくれて、ただただ子供の可愛さを眺めて寝ついたら夫婦の自由時間もたっぷり取れました。
あれっうちの子偉すぎて育児余裕じゃね?なんて勘違いしていられたのも 2 月中まで。生後三週間を迎えたあたりから昼夜問わず子供が全く寝付かなくなり、一気に夫婦の負荷が高まります。そこで「魔の三週間目」というものを知りました。
【体験談】新生児の「魔の三週目」寝かしつけの成功体験。いつまで続くの? | kosodate LIFE(子育てライフ)
まぁやっぱりこれぐらい忙しいのが普通なんだろうな…と逆に安心感を覚えつつ、正直ここから生後 2 ヶ月を迎える頃までは他のマイナートラブルも重なり壮絶な忙しさでした。
笑いが溢れる生後 3〜4 ヶ月
この頃にはだいぶ育児メインの生活にも慣れてきて、ちょっとくらいの騒ぎでは動じない心が備わってきます。そして何より重要なのは、親にとって嬉しすぎる成長がたくさん見られること。生後 2 ヶ月を過ぎたあたりから朝目を覚ました子供を覗き込むと満面の笑顔を見せるようになり、もうこの頃は毎日楽しく、育休のおかげで子供の成長を間近で見られることの喜びを噛み締めていました。
この時期の子供の適正睡眠時間は 15 時間くらいと日中も寝ている時間は長めで、ここまでにうまく生活リズムが整うと日中にも夫婦だけの時間が過ごせます。そういう意味で、生後 3 ヶ月頃は子供の可愛さと夫婦 2 人きりの時間がうまくバランスした時期でした。うちの子供は生後間もない頃こそ大変だったもののやはり寝つきがよい方なのと、夫婦であれこれ試行錯誤したおかげで生活リズムは理想的な形ができていました。夫婦ともに育児に専念し、しっかり基盤を作ったおかげで生まれたゆとりだったなと思います。
生後 4 ヶ月にかけてもまだまだ楽しい時期が続きますが、今度は寝返りを始めて運動量が増えたり日中の活動時間が増えて忙しさが増してきます。この頃は朝 8 時前後からお風呂と寝かしつけをする 7:30 ごろまでほぼ子供につきっきりで、もはやフルタイム勤務並みの生活スタイルになっていました。育"休"といっても全く休めないと身をもって知ります。
成長に感動し不安も増える生後 5〜6 ヶ月
この頃には 1 日のリズムが確立でき、日中時間がない中の隙間をぬって夫婦でやりたいことをどんどん消化していく余裕も生まれました。
生後 5 ヶ月を超えると離乳食を開始し、レシピを考えたり食べさせる時間の確保など忙しさが再燃します。相変わらず子供は日中元気いっぱいで、この頃は常にコロコロ転がり回ったりモノに興味津々で手を伸ばしたり、成長が嬉しいと同時に緊張感も高まります。
育児の練度が上がってきても日中に子供と遊び続けるのは結構消耗します。この時期は夫婦の気晴らしも兼ねて子供をベビーカーに乗せ、混雑がマシな平日の日中を狙って頻繁に外出をしました。昔は意識したことがなかったですが、東京都内のメジャーな沿線もベビーカーに到底フレンドリーではない構造が多く、2 人で出かけるとだいぶ負担が軽くなりました。
そしてこの時期には睡眠退行が起こり、深夜に何度も起きたり日中に眠い時ぐずったりということが起きました。生後3週目の頃を除いては目立ったぐずりが無く油断してたところ、育休も残りわずかのタイミングで起こりやや焦りました。他にも突然の哺乳瓶拒否などトラブルは続きましたが、夫婦ともに育児の練度が上がっていたおかげでなんとか乗り切りました。
【医師監修】睡眠退行はいつからいつまで? 赤ちゃんが寝ない原因と対処法 | マイナビ子育て
こうして振り返っても、最も忙しい初期を乗り越えてからも定期的に負荷が高まる時期があり、これだけの期間休めたのは本当に助かりました。
家事や育児の分担
育児での属人化を減らすべく作業での分担はせず、夜は妻担当・日中を自分が担当といった時間別の分担のみを決めました。担当する時間帯を分けることで 2 人ともダウンしているような時間がなく、育児のリズム作りが早い段階で確立できました。
自分はその他に水回り・飼い猫のトイレ掃除、ゴミ出し、洗濯、お風呂など、家事全般をこなしていました。これらは病原菌リスクや体力消耗があるので妊娠期間中からやっていましたが、妻からも「家事全部やってくれるだけで十分助かる」と感謝されています。こなす量は多いですが男性側の方が圧倒的に効率が良く、この時間この曜日に必ずやるというルーチン化をしてしまえば日々の生活リズムの中に組み込み楽にこなすことができました。
また今までずっと妻に任せきりだった料理をし家事スキルの穴埋めを試みたり、育休後半は家事育児の幅を広げることにもチャレンジしました。育児は 0 歳児期を過ぎても続くので、この期間になるべく色んな事をこなせるようになるのはオススメです。
母親と対等になろうとしない
育児開始時はかなり張り切っていて、出産を乗り切った妻の負荷を下げるためにも自分が何でもこなさねば!と考えていました。 しかし当然ながら父親は母乳をあげられないし母親同等の育児はできません。ミルクあげればなんとかなるでしょ?とか考えていた頃もありましたが、母乳パワー最強です...。それでもなんとか寝かしつけを頑張りたい → 撃沈して妻に任せるということが度々起き、育児の初期は落ち込みました。
新生児は母親の匂いや声でリラックスするとも言われていますし、そもそも生理的に超えられない壁があります。寝かしつけは母乳をあげた流れでセットにした方が圧倒的に効率的な場面が多いので、妻が対応できるときは任せるようにしました。
父親も育児全般をこなせるのに越したことはないですが、あんまり頑張り過ぎないのも大事だなと実感しました。産後うつ等も決して母親だけの問題じゃありません。むしろ母親は自治体の育児コミュニティ等の輪に入ったり産後カウンセリングを受ける機会もありますが、育休パパは結構孤独です。。。
育児やキャリアに対するマインドの変化
正直を言うと、出産前は育児に忙しい時期だけしっかり育休をとって妻のサポートをし、なるべく早く仕事に復帰しようという気持ちが強かったです。復帰後も最大限育児に参画しようとは考えていたものの、要は自分の仕事>家庭というマインドから脱却できていませんでした。でも、そうなってしまうくらいに今の仕事がフェーズ的に面白く、このタイミングで抜けることへの焦りがあったんです...。特にスタートアップに勤めている人なら同じ気持ちになる人も多いんじゃないかと思います。
この半年ほど強制的に仕事から距離をおくことで、一歩引いて長い目で考えられるようになりました。会社が続く限り面白い仕事に関わるチャンスはきっとあるし、今良い仕事をして評価されたい欲はあるけどコツコツやって数年先に報われてもいい。子供が生まれたから仕事を諦めるのではなく、細く長いアプローチに切り替えることで子育ても仕事も楽しくやれそうかな?と思いつつあります。
将来に向けた準備
育児のことで頭がいっぱいでしたが、0歳時期は保育園見学など将来に向けた準備も必要になってきます。これは平日でないと動きづらかったりして自分が休みでなければ任せっきりになってたと思うので、育休中に動けたのはよかったです。 他にも将来家を移り住む計画を立ているなら、ゆっくり住みたい街の雰囲気を見たり物件を見て回れるのも育休中がラストチャンスかもしれません。
そのほか家族としてどうしていきたいか、夫婦で対話する時間が増えたのも休みをとったおかげだなと思います。
さいごに
約半年の育休期間での出来事、感じたことなどを体験談として書きました。
始める前はあくまで大変な時期を乗り切るための育休だと思っていたけど、それだけでなく子供の成長を夫婦で喜んだり、今後子育てと両立してどんなキャリアを描くかなど未来のことを考えられて充実した期間でした。半年の育休と聞くと長すぎでは?? というのが育児開始前のイメージでしたが、終わってみれば過不足ないちょうどいい長さだったなと思います。
妻からは育休の終わりに「長期の育休をとってくれたお陰で本当に助かったし、育児を楽しめた」と言ってもらえて育休の達成感もありました。育児開始前に弊社 CEO から「夫婦の愛情曲線」というものについて教えてもらったのですが、なんとか回復の曲線を描けてるんじゃないか…!と勝手に思っています。
初めて育休をとる方へ、よくこれを共有してます。身の回りでも文字通り2つにパッキリ分かれる。しっかり家庭の中で背中を預けあって一層深い関係へ。https://t.co/K8k11nTayL pic.twitter.com/LLa0Y5SjsL
— yamotty | 矢本真丈 (10X) (@yamotty3) February 12, 2021
冒頭にも書いた通り、今勤めている株式会社 10X はまだまだ小さな会社です。にも関わらず育休取得を後押ししてもらえて同僚にも会社にもとにかく感謝です。この休みのおかげでスムーズな復帰ができそうなので、早くキャッチアップして成果を出したいところ。
最後に重要情報として、そんな弊社では先日資金調達を実施し、さらに採用を拡大中です。とにかく仕事から離れるのが惜しくて仕方ないくらい熱いフェーズですが、安心して働きやすい環境づくりも積極的に行っており子育て親にとっても挑戦しやすい環境です。オープンオフィスも行っているので、事業の話や働く環境について聞きたい場合はぜひ応募ください!